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激しく愛し合っている最中に、幼い我が子が窓から転落死してしまった夫婦。妻は深い悲しみと自責の念から心を病んでしまい、セラピストである夫はそんな彼女を自ら治療しようと、二人が「エデン」と呼ぶ森の中の山小屋へ連れてゆく。しかし、エデンを囲む自然の影響か、妻の精神状態は悪化の一途をたどり、さらには夫に対し凶暴になってゆく。 |
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子供を突然亡くす母親、セックス依存、森を彷徨うこと、精神セラピー、宗教的モチーフ…これまでもトリアー作品に特徴的に現れてきたアイコンのすべてが、さらに人間の心の奥深い場所まで届くような強度で迫る、ラース・フォン・トリアーの集大成ともいえる渾身の一作である。
子供を亡くしても平然として見える夫への妻の不信、子供を亡くす前からすでに精神を病んでいた妻の秘密を知った時の夫の驚き、自分達を取り巻く世界が突然不確かで不安に満ちたものに姿を変える時、人間はどのようにして精神の均衡を保とうとするのだろうか。夫婦が“エデン”と呼ぶ森の山小屋で体験することになる恐るべき試練とは…。悪夢的ともいえるトリアーの世界に果敢に挑んだシャルロット・ゲンズブールの演技とともに、トリアーが、デジタル技術の発展が映画にどれだけの恩恵を与えうるかという問いに、目を瞠るようなその精密かつ美しい音響と映像で答えたことにも注目しよう。
(雨宮) |
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