上映作品


The Origin - 北欧映画作家たちの原点 -
エレメント・オブ・クライム
■ 原題:Forbrydelsens Element/英題:The Element of Crime
■ 監督:ラース・フォン・トリアー(Lars von Trier)
■ 出演:マイケル・エルフィック/メ・メ・レイ/エスモンド・ナイト
■ 1984年 デンマーク ■ 104min ■ 言語:English/Arabic
【受賞】 1984年カンヌ国際映画祭高等技術委員賞ほか
未成年者の観覧に適さない暴力的・性的な描写があります。
ストーリー
警部フィッシャーは、13年ぶりにカイロからヨーロッパに呼び戻される。引退した前任者のオズボーンに代わり、未解決の連続少女殺人事件を捜査するためだった。恩師でもあったオズボーンと同じくプロファイリング的手法を用い、娼婦キムの助けを借りながら少しずつ事件の真相に迫ってゆくフィッシャー。しかし、まるでミイラ捕りがミイラと化すように、いつしか彼の心は犯罪の闇に囚われてゆく……。
作品紹介
最新作『メランコリア』も話題のラース・フォン・トリアー監督、28歳当時の長篇デビュー作。新作を発表するたびに物議を醸す孤高の映画作家の原点は、黄金色にも近いセピア調の映像がスクリーンを染め上げる、澱のような頽廃と倦怠に充ちた異色のフィルム・ノワールだ。
ストーリー自体はわかりやすいが、現実感とかけ離れた映像や、あえてキャラクターの輪郭を明確にさせない人物造形、そして複雑に入り組んだ構成の妙で、ジャンルの定型に収まらない独特の世界観を創り出している。
物語が進むにつれ、主人公がどんどん自身の内面の奥深くにはまり込んでゆくというスタイルは、その後のトリアー作品すべてに共通している点と言えるだろう。そしてそれは、なにより彼自身の内面の投影でもある。
気だるく、陰々滅々としていながら、映画はある種の中毒性でも持つかのように観る者の心を捉えて離さない。吹きすさぶ風の音、水を多用したイメージ、人物を覆う影、バラバラに切り刻まれた少女の体、馬の死骸…。目に届く、耳に届くすべてが禍々しいのに抗い切れない魔的吸引力を放っている。
この“心地好い悪夢”のような感覚は、ぜひとも現実から束の間切り離される劇場という空間でこそ味わいたい。 (栗本)