Lars von Trier / The Kaurismäki Bros. ー初期傑作選ー

北欧映画界の重鎮、ラース・フォン・トリアーと、ミカとアキのカウリスマキ兄弟の初期の傑作。

メディア

原題:Medea 英題:Medea 
■監督:ラース・フォン・トリアー Lars von Trier  

出演:ウド・キアー (Udo Kier)、キルステン・オルセン (Kristen Olesen)、ヘニング・ジェンセン (Henning Jensen)  

■製作年:1988年 ■製作国:デンマーク ■上映時間:77min   

言語:デンマーク語 (Danish)  ■字幕:日本語【With Japanese subtitles】   

2/9 sun 21:30, 2/12 wed 16:30, 2/13 thu 21:30 

ユーロスペース

ストーリー

コルキスの王女メディアは故郷を捨て、夫イアソンと二人の息子と共にコリントスに暮らしていた。しかしコリントスの王は娘であるグラウケとイアソンの結婚を望み、イアソンは国の財力と権力を選び、家族を捨てる。 周囲から魔女と恐れられているメディアは国外追放を言い渡されてしまう。苦悩の中、メディアは静かに復讐を果たしていく。

作品紹介

1968年に亡くなったカール・Th・ドライヤーが1962年に執筆していた脚本を元に、ラース・フォン・トリアーが独自の解釈を付け加え、テレビ放映向けに映像化を行った。製作費を工面できていたならばドライヤーの初のカラー作品として誕生していたであろう『メディア』。パゾリーニが1969年にマリア・カラス主演で制作した『王女メディア』ではドライヤーへの言及はないが、主演をカラスに演じさせることはドライヤーが脚本を作っている時のアイデアのようだ。そして時を経た1988年、トリアーは新たなるメディア像を創り出した。
ドライヤーの脚本と、もとを辿れば紀元前に書かれたギリシャ悲劇のひとつであるこの物語に、トリアー的要素とも言える彼の作家性が強く盛り込まれていることを作品を通じて感じ取れる。ウド・キアー演じる夫イアソンから裏切られ、葛藤し苦しみながらも復讐のために意思を貫き通すメディアは、他のトリアー作品でおなじみの女性主人公と重なる。原作者エウリピデスはトリアーという作家の手によって演出されることを予期していたとしか思えないほど、トリアーが取り組んできた受難や苦悩といったテーマと親和性が高い。そしてトリアー自身、ドライヤーからの影響についてたびたび表明しており、本作はドライヤーの脚本とトリアーの表現が見事に融合した奇跡の一本と言えよう。

予告編