PANORAMA

ジャンルを問わず話題作を選りすぐった北欧映画傑作選

陰謀のデンマーク

■原題: Danmarks sønner 英題: Sons of Denmark
■監督・脚本:ウラー・サリム Ulaa Salim
■出演: ザキ・ユーセフ(Zaki Youssef)、ムハンマド・イスマイル・ムハンマド(Mohammed Ismail Mohammed)、ラスムス・ビョーグ(Rasmus Bjerg)、エリオット・クロセット・ホーヴ(Elliott Crosset Hove)
■製作年:2019年 ■製作国:デンマーク■上映時間:120mn
■言語:デンマーク語(Danish)、アラビア語(Arabic) ■字幕:日本語、英語【With English subtitles】

2019年 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭:監督賞

2019年 マルメ青少年国際映画祭:作品賞(受賞)

2/10 mon 11:00, 2/11 tue 16:00, 2/12 wed 11:00

ユーロスペース

ストーリー

23名の犠牲者を出した爆発テロ発生から1年後、2025年のコペンハーゲン。移民排斥を唱える極右党の党首ノーデルは支持率を上げ、それに伴いヘイト・クライムも過激さを増していた。怯える移民の中からはそれに対抗する組織が生まれ、19歳のザカリアは組織に傾倒していく。彼は兄貴分であるアリに心を許し、絆を深めていたが、ある日ノーデル暗殺を命じられる。

作品紹介

原題の“Danmarks sønner”は「デンマークの息子」という意味で、劇中に登場するネオナチ組織の名称である。 主人公は移民でムスリムのザカリア。彼は民族浄化の対象にされる恐怖と憤りを反極右組織の活動の活動に捧げている。しかし、あるシーンで主人公がスイッチする。もうひとりの主人公もまた、移民であるマリク。しかしながら彼は警察官としての任務を全うし、ノーデルの警護にあたっている。
本作が長編デビュー作となるウラー・サリムはコペンハーゲン生まれだが、イラク移民の両親を持つ。舞台は少しだけ未来の2025年のコペンハーゲンに設定されているが、監督は「どこで起きてもおかしくない物語」として描いている。衝撃のラストは、どうすれば憎しみの連鎖を断ち切ることができるのか、という問題を提起し、激化するナショナリズムに警鐘を鳴らしている。 映画は、何かで揉めていたであろう若い恋人同士が仲直りをする他愛もないシーンから始まる。ふたりは別れ、女性が乗り場へと消えていった直後、爆発が起きる。地上に留まっていた片割れの男性役はデンマークの若手俳優の注目株である『ウィンター・ブラザーズ』、『氷の季節』のエリオット・クロセット・ホーヴが演じている。彼が主人公なのか……と思いきや、1年後のシーンからはぱったりと出てこなくなる。しかし彼はこのテーマを伝える重要な担い手として再度登場する。短い登場シーンに著名な俳優を配した監督の意図が見える。彼であることが分かる必要があるのだ。
重々しいテーマながらがも、スタイリッシュな映像とサスペンスフルな展開で、エンターテインメントとしても楽しめる作品になっている。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で監督賞を受賞、デンマークのアカデミー賞にあたるロバート賞にもノミネートされている。今後も注目すべき監督がまたひとり誕生した。

予告編